ファン付きベストで現場が変わる!熱中症対策義務化で加速する暑さ対策
ヤマト運輸が2024年6月から「ファン付きベスト」を全国の配送スタッフに貸与するというニュースが話題になっています(北海道・秋田など一部地域を除く)。背景には、6月から施行される「熱中症対策の義務化」があります。さらに、暑さ指数(WBGT)を測定する機器や、手首装着型のウェアラブルデバイスによる健康管理も進められ、現場で働く人の安全を守る取り組みが広がっています。これは物流業界だけでなく、全国の職場に関わる大きな動きです。
- ファン付きベストはコスト?それとも投資?
- 企業の安全対策は「先行投資」になる
- このニュースをもっと深く理解するために
- そもそも「WBGT」って何?
- 「ファン付きベスト」って本当に効くの?
- 「熱中症対策の義務化」って何が変わるの?
- 物流業界の人手不足と働き方改革

ファン付きベストはコスト?それとも投資?
企業の安全対策は「先行投資」になる
こうしたファン付きベストやウェアラブル機器の導入、最初に見ると「コストがかかるな」と感じる人も多いかもしれません。でも、実はこれは「人への投資」です。たとえば、熱中症でスタッフが倒れてしまえば、会社は労災対応や人手不足で大きな損失を抱えます。だからこそ、先にしっかり設備投資して、安全で快適な職場環境をつくることが、結果的に会社の利益にもつながるわけです。
しかも、熱中症による労災が発生すれば、企業イメージへのダメージも小さくありません。近年はSNSでの情報拡散も早く、労働環境が悪いという印象が一気に広がる時代です。「社員を大事にしている企業だな」と思ってもらえるか、「使い捨てみたいに扱っている会社だな」と思われるかは、こうした対応一つで変わってきます。
経営視点から見ても、熱中症対策は「義務」だからやるのではなく、「企業価値を上げるための戦略」として捉えるべきです。安全な労働環境は、人材確保にもつながりますし、結果的に事業の持続性を高めることにもなります。
このニュースをもっと深く理解するために
そもそも「WBGT」って何?
ニュースに出てきた「WBGT(暑さ指数)」は、気温だけではなく「湿度」や「輻射熱(ふくしゃねつ/地面や建物からの熱)」も考慮して、熱中症の危険度を評価する指標です。たとえば、気温が30度でも湿度が高ければ熱中症のリスクは上がります。
このWBGTは、気温+湿度+日射の影響を総合的に判断するので、「今日はちょっと暑いけど大丈夫だろう」という感覚よりもずっと正確。これを測定することで、作業の中止や休憩のタイミングを科学的に決めることができるのです。
一般的に、WBGTが28(厳重警戒)を超えると熱中症患者が著しく増加するとされています。熱中症の予防には、この数値の把握が欠かせません。
「ファン付きベスト」って本当に効くの?
ファン付きベストは、背中や脇に小型のファンがついていて、外気を取り込み、服の中に風を送ることで汗を気化させ、体温を下げる仕組みです。エアコンのない屋外作業や工場内などで、今や欠かせないアイテムになりつつあります。
実際、農業・建設・警備などの現場でも導入が進んでおり、「あるとないとでは全然違う」という声が多数。もちろん、湿度が高すぎると効果が薄れる面もありますが、それでも「熱中症の初期症状を防ぐ」効果が期待されています。
最近ではUSB充電式やバッテリー持続時間が長いモデルも出ており、使いやすさも年々進化しています。
「熱中症対策の義務化」って何が変わるの?
2025年6月1日から施行される「労働安全衛生規則の改正」によって、職場での熱中症対策が義務になります。つまり、「注意喚起してくださいね」ではなく、「対策をしないと違反になりますよ」というルールに変わるわけです。
具体的には、WBGTの測定や、作業環境に応じた水分・塩分補給の促進、休憩の確保などが求められます。対象となるのは、屋外作業や空調のない工場内など、熱中症リスクが高い職場です。
企業にとっては、これまで「できればやるべき」だったことが「やらなきゃいけない」になるという大きな変化。これは働く人の命を守るためにも、きわめて重要な一歩です。
物流業界の人手不足と働き方改革
今回のニュースの背景には、物流業界が抱える「人手不足」もあります。2024年問題(働き方改革に伴う労働時間の上限設定)で、ドライバーの確保はますます難しくなっています。
だからこそ、「働きやすい職場環境」を整えることが、物流業界の課題解決に直結しています。暑さに配慮してくれる会社、しっかり安全対策をしてくれる会社は、働き手にとって魅力的です。
一人ひとりが安心して働ける職場があれば、離職も防げますし、新しい人材も集まりやすくなります。「ファン付きベスト」は、そんな時代のシンボルともいえる存在かもしれません。