深夜に働く人たちの声が、ようやく届いたのかもしれない
牛丼チェーン「すき家」が、異物混入問題への対応として、これまでの24時間営業を見直し、2025年4月から23時間営業に切り替えました。同グループの「なか卯」もこれに続き、24時間営業の在り方が改めて注目されています。深夜営業はコストや人手不足の影響を受けやすく、今後の持続可能性が問われています。この記事では、このニュースをもとに、外食業界の経済構造や働き方の変化を深掘りしていきます。
- 24時間営業、そろそろ限界かも
- 「働く人の現実」深夜営業の難しさ
- 外食チェーンの仕組みを知ろう
- 「チェーンストア理論」ってなに?
- なぜ深夜営業は成立していたの?
- 「やらされ仕事」が心を削る?
- 「実質賃金」って何? なぜ下がると問題?

24時間営業、そろそろ限界かも
「働く人の現実」深夜営業の難しさ
ニュースでは「すき家」が24時間営業をやめたと報じられましたが、これは単なる衛生対策ではなく、もっと深い構造的な変化を感じさせる出来事です。実際、深夜営業の維持には人手とコストがかかります。これまで日本では、低賃金と人海戦術でなんとか成立していましたが、いまや人手不足と賃金上昇というダブルパンチで、そんな体制は通用しなくなっています。
テクノロジーによる代替が進んでいるとはいえ、店舗運営にはまだまだ人が必要です。AIやロボットが全部やってくれる時代はまだ少し先の話。今の現場では、人を確保するために賃金を上げるしかないけれど、それを商品価格に転嫁すれば、お客さんが離れていくリスクもある。つまり、企業も働く人も、どっちもギリギリのところで踏ん張っているのが現実です。
こうした状況を見ると、外食産業が「人を酷使する前提」で成り立っていたことが、いよいよ限界を迎えているように感じます。これからは、人に依存しすぎない、新しいサービスの形が求められる時代に入っていくのかもしれません。
外食チェーンの仕組みを知ろう
「チェーンストア理論」ってなに?
チェーンストア理論とは、同じ業態の店舗を多数展開することで、効率よく利益をあげる戦略です。外食チェーンでは、調理マニュアルを統一し、仕入れや物流も一元管理。本部で管理された「型どおりの店」を大量に作ることで、全体のコストを抑え、安定したサービスを提供しています。
ただしこの仕組みでは、店舗で働くスタッフはマニュアル作業が中心となり、個性や創意工夫が入り込む余地が少なくなります。結果として「やらされ仕事」になりやすく、長期的に働き続けるのが難しいという声もあります。
それでもこれまでこの形が続いてきたのは、安い労働力が潤沢にあったから。でもそれが通用しなくなりつつある今、仕組み自体を見直す必要があるのです。
なぜ深夜営業は成立していたの?
一見すると「深夜にそんなに客がいるの?」と思うかもしれませんが、実は牛丼チェーンなどでは、深夜帯にもある程度の需要があります。特に、深夜のトラックドライバー、夜勤明けの人、深夜バスの利用者などにとっては重要な存在でした。
また、固定費(家賃や冷蔵庫の電気代など)は店を閉めていても発生するため、売上が少しでもあるなら開けていた方が得、という考え方もあります。人件費が安ければ、それで成立していたわけです。
でも人件費が上がればどうでしょう? 売上が変わらなければ、採算が合わなくなります。だからこそ今、「深夜営業は本当に必要か?」という問いが出てきているのです。
「やらされ仕事」が心を削る?
最近、「うつ病などの心の病」が増えていると言われています。これが労働環境の変化と関係あるかどうかはまだ明確ではありませんが、「やりがいのない仕事」を長く続けることがストレスになる、というのは多くの人が感じていることではないでしょうか。
マニュアルどおりの作業ばかりで、自分で考える余地もない。そんな日々が続くと、「なんのために働いてるんだろう」と感じてしまうのは無理もありません。
外食業界に限らず、こうした「やらされ仕事」をテクノロジーで少しでも軽くできるなら、それは私たちにとって大きな希望になるのかもしれません。
「実質賃金」って何? なぜ下がると問題?
ニュースでも出てきた「実質賃金」とは、給料から物価の変動を差し引いた"本当の買える力"のことです。たとえば給料が増えても、物価も同じだけ上がれば、実質的には何も豊かになっていないことになります。
日本では2000年代以降、この実質賃金がほとんど伸びておらず、むしろ下がってきました。物価が上がっているのに給料が追いつかない。だから「生活が苦しくなった」と感じる人が増えているのです。
この流れは外食産業にも影響を与えていて、安い人件費を前提にしたビジネスモデルが立ち行かなくなっています。今後は「人に優しい働き方」が企業にとっても生き残りの鍵になるかもしれません。