50代から投資を始めるって遅い?長期投資と老後資金について考えてみた

50代から投資を始めようとすると、「今からでは遅いのでは」と迷う人も多いと思います。退職までの年数を考えると、20年、30年続ける長期投資は自分には向いていないようにも感じます。

ところが、50代の投資は「あと何年働くか」だけでは決まりません。老後資金をいつ使うのか、退職前後に株価が大きく下がったらどうするのか、年金で足りない生活費をどこから補うのか。年齢が上がるほど、投資と生活を切り離して考えにくくなります。

50代からの長期投資は本当に遅いのか。老後資金のうちどこまでを投資に回せるのか。退職後の取り崩しまで含めて考えていきます。

  • 50代からの投資は「退職まであと何年」だけで考えない
  • 老後資金2,000万円があっても全部を投資できるとは限らない
  • 退職直前に株が30%下がったらどうなるのか
  • 私は30代でも仕事中に株価を確認していた
  • 60代からは資産を「増やす」だけでは終わらない
  • 50代からの投資について私が考えること
老後資金を考えるときは貯めるだけでなく50代からの投資や退職後の使い方まで含めて考えておきたい【今日の経済ニュース】
2026年9月21日

50代からの投資は「退職まであと何年」だけで考えない

退職まで10年でも投資期間が10年とは限らない

50歳から60歳までは10年です。そのため、「50歳から株式投資を始めても、長期投資と呼べるほど時間がない」と考えるのは自然です。

ここで混同しやすいのが、退職する時期と、お金を使う時期です。

例えば50歳で1,500万円の金融資産を持っていたとしても、その1,500万円を60歳になった日にすべて使うわけではありません。

使う予定 50歳から使うまで
55歳の住宅修繕 5年
65歳以降の生活費 15年以上
75歳以降に使う資金 25年以上

同じ人が持っているお金でも、使う時期によって運用できる期間は違います。

金融庁も「高齢社会における資産の形成・管理での心構え」で、長寿化を踏まえると、現役期から長期・積立・分散投資を行っていなかった人でも、リタイア期前後から始めても遅くない場合も多いという考え方を示しています。

50代だから投資期間が短いのではなく、5年後に使うお金は短期、20年以上使わないお金は長期というように、資金ごとに時間が違います。

長期投資は何年なら安心なのか

では、10年あれば長期投資として十分なのでしょうか。

長期投資には「○年以上なら安全」という年数の決まりはありません。金融庁も、株式や投資信託には元本割れのおそれがあると説明したうえで、長期・積立・分散によって価格変動と付き合う考え方を示しています。

金融庁の「積立投資の効果」では、国内外の株式と債券へ毎月同額を積み立てたケースで、5年間保有した場合には元本割れした期間がある一方、20年間保有したケースでは結果のばらつきが小さくなっています。

1989年以降の過去データでは、保有期間を長くしたケースほど、運用結果の振れ幅が小さくなっています。

老後資金2,000万円があっても全部を投資できるとは限らない

まず数年以内に使う予定のお金を分ける

仮に55歳で金融資産が2,000万円ある人を考えてみます。

「2,000万円あるなら、そのうち何%を株にすればいいのか」と考えたくなりますが、先に確認したいのは今後の支出です。

55歳・金融資産2,000万円の例

■3年後に住宅を修繕
200万円
■5年以内に車を買い替える
200万円
■急な支出に備える資金
300万円
■当面使う予定を決めていない資金
1,300万円

すべて説明のための仮定です。

この人にとって、2,000万円すべてが同じ性質のお金ではありません。住宅修繕や車の買い替えに使う400万円は、使う時期が決まっています。

仮にその400万円を株式へ入れ、支払い直前に相場が大きく下落すると、値下がりした状態でも売却せざるを得ません。

金融庁も退職金などを運用する場合について、当座の生活資金や十分な予備資金を余裕をもって差し引き、当面の使い道がない資金で運用を検討する考え方を示しています。

老後資金が2,000万円あるか、3,000万円あるかという総額だけでは、投資に回せる金額は分かりません。その中から近い将来に使うお金を引いたあと、初めて長く運用できる資金が見えてきます。

退職後の生活費はいくら不足するのか

次に考えたいのが、退職後に毎月いくら金融資産から取り崩すことになるのかです。

例えば、65歳以降の年金などの収入が月22万円、生活費が月27万円だったとします。

毎月の生活費 27万円
年金などの収入 22万円
毎月の不足 5万円
年間の不足 60万円
10年間の不足 600万円

金額はすべて仮定で、税金や社会保険料、物価上昇などは入れていません。

この例では、老後資金から毎年60万円を補う生活になります。10年間なら600万円です。

ここまで計算すると、老後資金は投資して増やすためだけのお金ではなく、毎月の生活費を補うお金でもあることが分かります。

さらに住宅修繕、医療、介護など予定どおりにならない支出も出てきます。50代で資産配分を考えるときは、株式比率だけを見るよりも、退職後に資産から毎年いくら取り崩すことになるのかを先に考えたほうが具体的です。

退職直前に株が30%下がったらどうなるのか

2,000万円が1,400万円になる場面を考える

株価が30%下がったとき、自分の資産がいくら減るのかを具体的に考えてみます。

30%という割合だけを見ると現実感が薄いため、金額に置き換えると次のようになります。

株式などの投資額 30%下落後 減少額
500万円 350万円 150万円
1,000万円 700万円 300万円
1,500万円 1,050万円 450万円
2,000万円 1,400万円 600万円

老後資金として貯めた2,000万円をすべて投資していれば、30%の値下がりで評価額は1,400万円になります。

600万円という減少額は、先ほどの「毎月5万円不足する生活」で考えると、10年分の不足額に相当します。

もちろん、下落後に相場が回復すれば評価額が戻ることもあります。いつ回復するかは事前には分かりません。

50代で考えたいのは、30%下落する確率を当てることではなく、実際に起きたときに自分の生活がどう変わるのかです。

暴落中に生活費のため株を売ると回復を待てない

積み立てを続けている現役世代と、金融資産を取り崩している退職後では、同じ株価下落でも意味が変わります。

現役で給与収入があり、生活費を給与から払えている間なら、株価が下がっても保有を続けられます。積み立てを続けていれば、値下がりした価格で新たに買うこともできます。

退職後に生活費を投資資産から出している場合、状況が違います。

例えば1,000万円の投資資産が30%下落して700万円になった時点で、生活費として年間60万円を取り崩すとします。

現金を別に持っていなければ、値下がりした資産を売って60万円を作ることになります。売却した分は、その後に相場が回復しても、その値上がりの恩恵を受けられません。

海外では、このように退職後の取り崩し開始時期と相場下落が重なるリスクを「sequence of returns risk(収益率の順序によるリスク)」と呼びます。

米国の大手金融サービス会社Fidelity Investmentsも「What is sequence of return risk?」で、同じ平均的な運用成績でも、退職直後に大きな下落が起き、その時期に資産を取り崩し続けると、その後の資産残高に大きな差が出ることをシミュレーションで示しています。

50代では「20年持てば大丈夫か」という投資期間だけでなく、取り崩しを始める時期に株価が下がった場合まで考えると、老後資金を現金と投資資産に分ける意味が変わってきます。

私は30代でも仕事中に株価を確認していた

「長期だから売らない」と実際に持ち続けることは違う

私も30代の頃に株式投資に挑戦しました。

その頃は毎日のように株価を見ていました。仕事をしている最中でも気になり、合間に携帯電話を開いて、自分が持っている株が上がったのか、下がったのかを確認していました。

今なら「長期投資なら短期の値動きを気にしなくてもよい」と説明できます。当時の自分は、そう簡単には割り切れていませんでした。

実際に30%下落して、自分のお金が数百万円減っていく場面でも平然としていられたかと考えると、自信はありません。

投資を始める前には、「暴落しても売らない」「長期間持つ」と決められます。毎日評価額が下がる画面を見ていると、その決意がどこまで続くのかは別の問題です。

この経験から考えると、投資できる金額は「家計上いくら余っているか」だけでは決められません。自分が値下がりを見ながら持ち続けられる金額なのかという感情面もあります。

50代では同じ値下がりでも背負っているお金が違う

30代の頃と50代以降では、株価が30%下がったという事実は同じでも、そのお金が持つ意味は異なります。

30代なら、この先20年、30年働いて収入を得られる人も多く、投資で損失が出ても給与から再び資産を積み上げる時間があります。

50代では退職が近づき、給与を得られる残りの期間は短くなります。さらに、その資金が老後の生活費、住宅修繕、医療や介護などに使う予定のお金であれば、値下がりしても「そのうち戻るだろう」と回復を待てる余裕も変わります。

逆に、生活費や近い将来の支出を別に確保できていて、10年、20年使う予定がない資金なら、50代でも株価の回復を待つ時間を確保できることがあります。

同じ50代でも、年収、退職金、年金、住宅ローン、家族構成、資産額によって状況は変わります。「50代なら株式○%」という数字だけでは、自分の生活に合う答えは出ません。

60代からは資産を「増やす」だけでは終わらない

年金で足りない生活費をどこから出すのか

退職すると、それまでとはお金の流れが逆になります。

お金の流れが変わる

  1. 現役中
    収入 → 生活費 → 貯蓄・投資
  2. 退職後
    年金などの収入 + 金融資産の取り崩し → 生活費

金融庁はリタイア期前後について、「中長期的な資産運用の継続」と「計画的な取崩し」を組み合わせる考え方を示しています。

つまり、退職したら投資をすべて終えるという考え方だけではありません。長く使わない資産は運用を続けながら、その時々に必要なお金を取り崩していく方法もあります。

運用しながら取り崩すと暴落の時期が影響する

60代以降の資産運用で難しいのは、「増やしたい」と「使わなければならない」が同時に起こることです。

株式をすべて現金にすれば、株価下落の影響は受けにくくなります。その一方で、長い老後の間に物価が上がれば、現金で買える物やサービスの量が減ることがあります。

株式を多く持てば、長期的な成長を取り込める可能性があります。その代わり、生活費を取り崩している時期に大きな下落が来ることもあります。

総務省統計局の「2026年8月分 消費者物価指数」では、全国の総合指数が前年同月比1.9%上昇、生鮮食品を除く総合指数が1.7%上昇しています。老後が長くなるほど、物価上昇によって現金で買える物やサービスの量が減る影響も積み重なります。

50代からの投資について私が考えること

余裕資金があるなら一部を投資に回す

私は、50代からでも、手元にある程度余裕のある資金があるなら、その一部を投資に回してもよいと考えています。

現在は物価が上昇しています。今後も物価が上がれば、同じ金額の現金で買える物やサービスは少なくなっていきます。老後資金をすべて現金で持つ場合も、物価上昇によって購買力が下がります。

数年以内に使う生活費や住宅修繕などのお金は現金で確保し、10年、20年使う予定がない余裕資金があるなら、その一部を投資に回す。私は、50代からの投資を、資産をできるだけ増やすためではなく、長い老後の中で物価上昇のリスクにも備える方法の一つとして考えています。

投資しないなら老後資金が何年持つかを計算する

値下がりに精神的に耐えられない人や、老後資金に余裕がなく、近い将来に使う可能性が高いお金しか持っていない人まで無理に投資する必要はないと思います。

投資をしない場合は、年金などの収入と生活費の差額を計算し、預貯金であと何年生活を支えられるのかを具体的に把握します。

投資するかどうかよりも先に、自分が持っているお金を「近いうちに使うお金」と「長く使わないお金」に分ける。余裕資金があるなら一部を投資へ回し、余裕がなければ現金を中心に老後の生活を組み立てる。これが、50代から老後資金を考えるときの私の結論です。