食事キャンセル界隈はZ世代特有?X世代・Y世代との違いから考える

「〇〇キャンセル界隈」というフレーズ、若い世代の会話で見聞きする機会が増えましたよね。マーケティングリサーチ会社のインテージでは、この言葉に関係する「食事キャンセル」というテーマで調査を行っています。結果を見てみると、18~24歳では約41%が週1回以上、普段より食事の回数が減っているそうです。

とはいえ、若い世代の朝食欠食自体は、実は昔から食育政策や公的な栄養調査で取り上げられてきたテーマでもあります。私自身はX世代なのですが、これを読んで「今の食事キャンセルって、Z世代ならではの特徴なんだろうか?」とふと気になりました。そこで今回は、X世代・Y世代・Z世代がそれぞれ若かった時代まで少しさかのぼって考えてみたいと思います。

  • 食事キャンセル界隈とは?18~24歳の約41%という数字
  • そもそもZ世代とは?X世代・Y世代との違い
  • X世代・Y世代が若かった時期にも朝食欠食はあった
  • 同じ「食事を後回し」でもZ世代を取り巻く環境は変わった
  • Z世代は本当に「タイパ」を特に重視する世代なのか
  • 「食事キャンセル」という言葉ができたことで何が変わったのか
  • 食事キャンセル界隈はZ世代特有なのか
  • 結論|食事キャンセルは昔からある欠食に現在の生活環境と新しい呼び方が加わったもの
スマートフォンを見ながら軽食を手にする若者。食事キャンセル界隈では、食事そのものよりも別の行動が優先される生活場面も調査で紹介されています。
スマートフォンを見ながら軽食を手にする若者。食事キャンセル界隈では、食事そのものよりも別の行動が優先される生活場面も調査で紹介されています。
2026年9月27日

食事キャンセル界隈とは?18~24歳の約41%という数字

食事キャンセルは「普段より食事回数が減ること」

まず、インテージが「食事キャンセル」をどう定義しているのか見てみましょう。

2025年10月、全国の15~49歳の男女2,754人を対象にインターネット調査が行われ、食事キャンセルの頻度が年齢別に集計されました。

食事キャンセルの定義 普段の1日の食事回数より食事回数が減ってしまうこと
全体 週1回以上が約34%
18~24歳 週1回以上が約41%

詳しい調査結果は、「Z世代の"キャンセル"実態?若者の今を読み解く?」で公開されているので、気になる方はぜひのぞいてみてください。

41%は何を表している数字なのか

この約41%という数字、正確には「18~24歳のうち、普段より食事回数が減る日が週1回以上ある人の割合」です。たとえば普段3食の人がある日たまたま2食になった、というのも食事キャンセルにカウントされます。

同じ調査では、1日3食を取る割合は高校生で約70%、25~29歳では56.1%となっていました。18~24歳については、進学や就職といったライフステージの変化と食事習慣との関係も分析されています。

25~29歳になると、自分なりの生活リズムに合わせた食事パターンが定着していく可能性も見えてきます。普段から1日2食で過ごしている人にとっては、2食の日はそもそも食事キャンセルには当たりません。

約41%という数字を読み解くうえで、まず押さえておきたいのは「18~24歳」という年齢と、その生活段階です。この年代がZ世代として育った時代背景については、この先の世代比較のところで改めて触れていきます。

そもそもZ世代とは?X世代・Y世代との違い

X世代・Y世代・Z世代は生まれた時代で分けられている

「Z世代」という呼び方の前には、X世代、Y世代という区分がありました。どこで世代を区切るかについては、実はいくつかの考え方があります。

経済産業省の資料に載っている区分の一例では、X世代を1960~1979年生まれ、Y世代を1980~1995年生まれ、Z世代を1996~2012年生まれとしています。別の資料では、Y世代を1980~1994年、Z世代を1995~2010年とする区分も紹介されています。

世代 生まれた時期の一例 経済産業省資料にみる時代背景の一例
X世代 1960~1979年 高度成長と資本主義、能力主義の全盛期
Y世代 1980~1995年 グローバル化と社会経済の安定期
Z世代 1996~2012年 デジタル化、イノベーションと格差・分断の時代

経済産業省の「世代ごとの価値観の違い」では、こうした時代背景とともに、世代ごとの価値観や消費行動についても整理されているので、興味のある方はチェックしてみてください。

同じ20歳でも育った情報環境が違う

X世代、Y世代、Z世代と食事キャンセルを結び付けて考えるなら、「20歳前後をどんな情報環境で過ごしていたか」という違いも見逃せません。

総務省の情報通信白書によると、日本のインターネット利用率は2000年代前半に大きく伸びました。その後は携帯電話でのインターネット利用が広がり、さらにスマートフォンも急速に普及していきます。

X世代が若かった頃はテレビや雑誌、固定電話が中心の時期が長く続きましたが、Y世代はちょうどインターネットや携帯電話が普及していく時期を若い時期に経験しています。そしてZ世代は、スマートフォンやSNSが最初から身近にある環境で育った人が多くなっています。

同じ20歳前後でも、友人とのやり取りや娯楽、情報収集の手段は世代によって少しずつ違ってきました。

X世代・Y世代が若かった時期にも朝食欠食はあった

20代の朝食欠食は1980年代から公的調査に記録されている

厚生労働省が実施してきた「国民栄養調査」(2003年から「国民健康・栄養調査」)には、1980年代から年代別の朝食欠食が記録されています。

年 20~29歳男性 20~29歳女性
1985年 23.5% 14.7%
1990年 25.5% 14.3%
1995年 30.8% 18.2%
2000年 30.5% 16.3%

この時期に20代を過ごした人の中には、今でいうX世代やY世代にあたる人たちが含まれています。

第5次食育推進基本計画でも20歳代と30歳代を「若い世代」と位置づけていて、2025年度の朝食欠食率は28.2%。2030年度には25%以下を目指すという目標も掲げられています。

ちなみに、食事キャンセルの約41%は「普段より食事回数が減ること」を対象にした数字で、食育推進基本計画や過去の公的調査は「朝食欠食」を扱っています。似ているようで、定義の異なる指標だといえます。

X世代の私にも食事や睡眠を後回しにした経験がある

私自身、20代の頃は徹夜で遊ぶことも珍しくなく、睡眠時間が2時間程度でもそのまま仕事に向かった経験があります。食事や睡眠よりも、遊びや仕事を優先する生活を、当時はごく普通のこととして送っていました。

今振り返ると、「食事キャンセル」と呼ばれそうな場面だったかもしれません。ただ当時は「朝飯を抜いた」「昼を食べ損ねた」で会話が終わっていたように思います。

これはあくまで私個人の経験としての話です。ただ、公的調査にも当時の20代の朝食欠食は記録されているので、今の若者と比べるときには「食事を抜く行動そのもの」と「その行動を取り巻く生活の条件」を分けて考えると、見えてくるものが変わってきます。

同じ「食事を後回し」でもZ世代を取り巻く環境は変わった

食事より先にする活動の中にSNSも入っている

17~29歳の学生8人へのインタビューでは、睡眠、友人とのやり取り、アルバイト、学業、SNSなどが優先され、その結果として食事が後回しになっていく様子が紹介されています。

食事を最初から省いてしまうケースもあれば、先に別の活動をした結果として食事の時間が減ってしまうケースもある、ということです。

このインタビューの中には、SNSなどオンライン上の活動も登場します。

X世代からY世代、Z世代へ情報通信環境が変化した

世代をまたいだ情報通信環境の変化は、総務省の情報通信白書からもうかがえます。

X世代が若い時期を過ごしたあと、日本ではインターネットと携帯電話が急速に広がりました。Y世代はまさにその変化のただ中で育ち、Z世代になるとスマートフォンやSNSがもう生活の一部として深く根付いています。

食事を後回しにする理由として、遊びや仕事、学業、友人とのやり取りが挙がってくるのは、実は世代を越えて共通している部分です。ただ、そのために使う道具やコミュニケーションの方法は、X世代、Y世代、Z世代のあいだで大きく変わってきました。

Z世代は本当に「タイパ」を特に重視する世代なのか

食事キャンセルで多い理由は「忙しい」「空腹を感じにくい」

食事キャンセルの理由として特に多かったのは、「忙しい」と「お腹がすかない」でした。18歳以上のどの年代でも、忙しさによって食事の時間を確保しづらいというケースが最も多く挙がっています。

食事を短時間で済ませたり、その分の時間を別の活動に回したりするのは、まさに「タイパ」という言葉と結び付きやすい場面だと言えそうです。

とはいえ食事キャンセルの中身をよく見ると、忙しさ、空腹感、生活リズム、他の活動との時間配分など、いくつもの事情が重なり合っているのが実情です。

時間を大切にしたい意識はX世代・Y世代にも広がっている

「Z世代=タイパ重視」というイメージを考えるうえで参考になるのが、2023年に16~65歳5,504人を対象に行われた調査です。

この調査では、約8割が「時間を大切にしたい」と回答していて、世代間の回答割合は統計的に同水準でした。さらにX世代、ミレニアル世代、Z世代のいずれでも、約半数が「毎日忙しく、時間に追われている感じがする」と答えており、こちらも世代間で統計的に同水準だったそうです。

調査元はこの結果について、タイパ意識は特定の世代だけのものではなく、幅広い世代に共通する価値観だと分析しています。

「食事キャンセル」という言葉ができたことで何が変わったのか

朝食抜き・食べ損ね・後回しが一つの言葉に入る

私が若かった頃は、「朝飯を抜いた」「昼を食べ損ねた」「忙しくて食べる時間が減った」と、その時々の場面をそれぞれ別の言葉で言い表していました。

今回の調査では、「普段より食事回数が減ること」をまとめて「食事キャンセル」と定義しています。朝食を抜いた日も、昼食を食べ損ねた日も、普段より食事回数が減れば、どちらも同じ定義に含まれるわけです。

こうした広い定義があることで、これまでバラバラに語られてきた行動を、ひとつのテーマとしてまとめて調べられるようになった、とも言えそうです。

41%という数字の中には違う生活場面が入っている

「食事キャンセル」というひとつの言葉でまとめられていても、その中身にはかなり幅があります。

朝寝坊で朝食のタイミングを逃した人、仕事や学業で食事が後ろにずれ込んだ人、友人とのやり取りやSNSを優先した人、単純にお腹がすくタイミングがいつもと違った人... 一食減るまでの経緯は、人によってさまざまです。

18~24歳の約41%という割合も、その中には複数の理由が混ざり合っています。数字の大きさだけを見るのではなく、「なぜ普段より一食減ったのか」まで踏み込んで読むと、食事キャンセルという言葉の裏にある生活場面の違いが見えてきます。

食事キャンセル界隈はZ世代特有なのか

若い時期の生活変化と世代ごとの環境を分けて考える

ここまでの内容を整理すると、食事キャンセルには大きく二つの論点があることが見えてきます。

一つは、進学、就職、仕事、遊び、友人付き合いなどによって生活リズムが変化しやすい「若い時期」そのものです。18~24歳については、進学や就職といったライフステージの変化に注目した分析があり、過去の公的調査にも当時の20代の朝食欠食がしっかり記録されています。

もう一つは、X世代・Y世代・Z世代のあいだで移り変わってきた情報通信環境です。インターネット、携帯電話、スマートフォン、SNSと、若い時期に使う情報通信の手段は世代によって変化してきました。

資料から直接わかるのは、18~24歳で食事キャンセルの割合が高いこと、食事を減らす理由に忙しさや空腹感などがあること、そして若い世代の朝食欠食が過去にも記録されていることです。世代ごとの情報環境の違いは、それぞれの時代の生活を比べるための材料として活用できそうです。

18~24歳の41%とZ世代全体は範囲が違う

食事キャンセルが約41%だったのは、あくまで18~24歳という年齢層です。前述の世代区分の一例では、この年齢層はZ世代に含まれますが、Z世代そのものにはもっと幅広い年齢層が含まれています。

18~24歳について分析されているのは、進学や就職といったライフステージの変化と、食習慣との関係です。

X世代・Y世代・Z世代を比べるときも、「世代の違い」と「20歳前後という生活段階の違い」を分けて考えると、食事キャンセルという現象がより具体的に見えてくるはずです。

結論|食事キャンセルは昔からある欠食に現在の生活環境と新しい呼び方が加わったもの

食事を抜いたり後回しにしたりする行動は、かつてX世代やY世代が若かった頃にも当たり前に存在していました。みなさんの周りでも、似たような経験を持つ方は多いはずです。

変わったのは、スマートフォンやSNSが生活の一部となった環境と、「食事キャンセル」という新しい言葉の登場です。若年期特有の生活パターンに現代の情報環境が重なり、新しいキャッチコピーで捉え直された姿と言えます。

言葉のイメージだけで判断するのではなく、自分たちの過去や時代背景と重ね合わせて考えてみる。そんな視点を持つことで、世代を超えたお互いの理解がより深まるのではないでしょうか。