畳のメリットとデメリットは?張り替えの負担と畳離れが進む理由

新しい畳の香りや、素足で歩いたときの感触が好きという人は多いでしょう。床に座ったり、寝転んだりできる畳には、フローリングとは違った良さがあります。その一方で、住宅の洋風化が進み、畳のある部屋は以前より身近な存在ではなくなってきました。

畳を使っている家庭でも、張り替えの費用や手間が負担になることがあります。さらに、国産い草の生産が減り、畳を製造・販売する店も厳しい経営環境に置かれています。畳にはどのようなメリットとデメリットがあり、なぜ畳離れが進んでいるのでしょうか。暮らしの中での使い勝手や維持費を比較しながら、畳文化をこれからも残していくために必要なことを考えます。

  • 畳離れはなぜ進んでいるのか
  • 畳のメリットと使い続けるための負担
  • 畳離れが国産い草と地域の畳店に与える影響
  • これからの暮らしに畳を残す方法
障子から光が差し込む畳敷きの和室。い草の風合いや床に直接座ってくつろげる心地よさがある一方、畳を長く使い続けるには定期的な張り替えや手入れも必要になる。
障子から光が差し込む畳敷きの和室。い草の風合いや床に直接座ってくつろげる心地よさがある一方、畳を長く使い続けるには定期的な張り替えや手入れも必要になる。
2026年10月20日

畳離れはなぜ進んでいるのか

住宅の洋風化で畳のある部屋が減少

かつての日本の住宅では、畳のある和室が寝室や居間、客間などに使われていました。床に布団を敷いて眠り、朝になれば片付けて別の用途に使うという生活は、限られた部屋を有効に利用する方法でもありました。

ところが、住宅の洋風化とともに、ベッドやソファ、ダイニングテーブルなどを使う生活が広がり、床材にもフローリングが選ばれるようになりました。椅子やベッドを中心とした暮らしでは、家具の配置や掃除のしやすさからフローリングを採用する家庭が増え、住宅を新築する際にも和室を設ける必要性が以前より小さくなっています。

畳には定期的な張り替えが必要という事情もあります。フローリングなら日常的な掃除を中心に維持できますが、い草の畳は表面が擦り切れたり色あせたりすると、畳表を交換することになります。住宅の建築費用に加えて将来の維持費も考えれば、最初からフローリングを選ぶ人がいるのも自然なことでしょう。

農林水産省も、住宅の洋風化などによる生活様式の変化を、畳表の需要減少の背景として挙げています。畳を敷く新しい住宅が減れば、新しく製造される畳の需要が縮小し、すでに畳を使っている住宅が減ることで張り替えの仕事も少なくなっていきます。

こうした住宅環境の変化は、畳の香りを知らない人が増えることにも関係しているのかもしれません。

畳の香りを「くさい」と感じるのはなぜ?

新しい畳のい草の香りを心地よいと感じる人がいる一方で、青臭い、匂いが強すぎると感じる人もいます。幼い頃から畳のある部屋で過ごしてきた人には懐かしい香りでも、和室のない住宅で育った子どもにとっては、初めて接する強い匂いなのかもしれません。

匂いの好き嫌いには、過去の経験が関係しています。東京成徳大学が2024年に公開した研究活動の紹介「においを感じる際の個人差」では、どのような匂いを、どのくらいの頻度で、どのような状況で嗅いできたかが、その匂いの好ましさに影響すると説明しています。

また、匂いに対する感覚には個人差があり、同じ環境で育った兄弟でも、好き嫌いや匂いを感じる強さが異なることがあるといいます。

このことから、畳の香りを嫌う理由として、い草の匂いに慣れていないことや、これまでの経験、匂いに対する感受性の違いなどが考えられます。幼い頃に畳の上で遊んだり、家族と過ごしたりした記憶があれば、その経験と香りが結び付いて心地よく感じられることもあるでしょう。

さらに、香りの強さも関係します。新しく張り替えた畳と長年使ってきた畳では、部屋に広がるい草の香りが違います。普段は畳の匂いが好きな人でも、張り替え直後の強い香りには戸惑うことがあるかもしれません。

畳の香りの受け止め方には、生活環境と個人の感覚の両方が関係しています。畳を取り入れる際には、実物の香りを確かめることも、素材を選ぶ方法の一つです。

畳のメリットと使い続けるための負担

フローリングと比べた畳のメリット

畳の大きなメリットは、床の上で直接くつろげることです。適度な弾力があるため、座布団を敷いて座るだけでなく、横になって休んだり、子どもが遊んだりする場所としても使えます。フローリングのように硬い床と比べると、素足や膝をついたときの感触にも違いがあります。

寝室として使いやすいことも畳の特徴です。布団を敷いて眠り、朝になれば畳んで片付けることで、昼間は部屋を広く使えます。ベッドを置くと寝るための空間が固定されますが、畳なら生活する時間帯に合わせて部屋の使い方を変えられます。

い草を使った畳には、湿気を吸収したり放出したりする性質もあります。表面の織り目による独特の肌触りや、新しく張り替えたときの香りを楽しめることも、天然素材ならではの魅力です。

フローリングには、家具を置きやすく、掃除も比較的簡単という良さがあります。飲み物をこぼした場合も拭き取りやすく、椅子やキャスター付き家具を使う部屋にも適しています。畳は水分や汚れが織り目に入りやすく、家具の重さによってへこみができることもあるため、日常的な使い方に合わせた手入れが必要です。

畳とフローリングの特徴を生活場面ごとに比較すると、次のようになります。

比較する項目 畳 フローリング
床の感触 弾力があり、直接座ったり横になったりしやすい 硬めで、椅子やテーブルを使う生活に向いている
寝室での利用 布団を片付ければ昼間も部屋を使える ベッドや家具を配置しやすい
掃除 織り目に沿った掃除や湿気への対策が必要 拭き掃除がしやすい
家具との相性 重い家具で表面がへこむことがある 椅子やテーブルを使いやすい
維持管理 畳表の裏返し・表替え・新調を行う 傷の補修や、傷みが進んだ場合の張り替えを行う

畳の張り替え費用とメンテナンスの問題

畳のデメリットとして気になるのが、張り替えにかかる費用と手間です。長年使用していると畳表が擦り切れたり、日に焼けて色が変わったりするため、状態に応じて裏返し、表替え、新調のいずれかを行います。

畳は、い草などを織って作る表面の「畳表」、芯となる「畳床」、周囲を覆う「畳縁」からできています。この構造を知ると、3つの張り替え方法の違いが分かります。

畳の張り替え方法

  • 裏返し:現在の畳表を取り外して裏面を表にし、再利用する方法。畳表の傷みが少ない場合に行います。
  • 表替え:畳床を再利用し、畳表と畳縁を新しいものに交換する方法。新しいい草の香りを楽しめます。
  • 新調:畳表と畳床を含め、畳そのものを交換する方法。芯が傷んでいたり、畳全体が変形していたりする場合に行います。

住宅リフォーム・リノベーション専門のLIXILリフォームショップが公開している畳の張り替えの基礎知識によると、1畳あたりの費用相場は次のとおりです。

張り替え方法 1畳あたり 6畳の場合
裏返し 4,000~9,000円 24,000~54,000円
表替え 4,000~20,000円 24,000~120,000円
新調 7,500~35,000円 45,000~210,000円

※6畳の費用は1畳あたりの相場を6倍した概算額。畳の素材や施工条件、古い畳の処分費用などによって総額は変わります。

例えば6畳の和室で、表替えの費用が1畳あたり1万円なら6万円かかります。部屋が複数あったり、国産い草の高品質な畳表を選んだりすると、まとまった出費になるでしょう。

裏返しは畳を使い始めてから2~5年程度を目安に行い、その後は畳表の傷み具合に応じて表替えを行います。畳床まで傷んだ場合は新調するため、使用年数だけでなく、畳表の擦り切れや畳床のへこみ、変形などを見て施工方法を選びます。

費用と並んで負担になるのが、畳屋を探して作業を依頼する手間です。実際に、私の自宅にも和室があり、畳を使っていますが、地元に畳屋がないため、畳替えを頼むことを面倒に感じています。新しい畳の感触や香りは気に入っていても、頼める店が身近にないと、張り替えを後回しにしてしまいます。

畳の表替えでは、一般的に畳店が現地で寸法や状態を確認し、畳を作業場へ運んでから新しい畳表に張り替え、再び部屋へ敷き込みます。依頼先によっては当日中に仕上げることもありますが、対応地域や作業日程、家具の移動、運搬費用などの調整も必要です。

日常の手入れでは、掃除機を畳の織り目に沿ってかけ、換気によって湿気がこもらないようにします。飲み物などをこぼしたときは早めに水分を取り除き、カビが発生しやすい環境を避けることも、畳を長く使うための基本です。

畳離れが国産い草と地域の畳店に与える影響

国産い草の生産はどれほど減ったのか

畳の需要が減少することは、畳の原料となるい草の生産にも影響しています。国内のい草生産は熊本県が中心となっており、農林水産省の統計からは、近年も生産規模の縮小が続いていることが分かります。

農林水産省の令和7年産「い」の作付面積、収穫量及び畳表生産量(熊本県)によると、2025年産のい草作付面積は242ヘクタールで、前年の319ヘクタールから24%減少しました。収穫量も4,980トンから3,630トンへ27%減っています。

減少は前年との比較だけにとどまりません。2016年から2025年までの生産状況を比較すると、国産い草の生産基盤が大幅に縮小してきたことが分かります。

項目 2016年 2025年
作付面積 631ha 242ha
収穫量 8,200トン 3,630トン
い草生産農家数 509戸 223戸
畳表生産量 250万枚 103万枚

※農林水産省の熊本県に関する統計。2016年は平成28年産、2025年は2026年3月31日公表の確報値。畳表生産量は各年の前年7月から当年6月までの生産分。

この9年間で作付面積は約62%、収穫量は約56%減少し、い草生産農家も半数以下になりました。畳表生産量も250万枚から103万枚となり、約59%減少しています。

では、生産者はなぜ減っているのでしょうか。

農林水産省は、2025年産の作付面積が減少した要因として、高齢化による労働力不足と生産コストの高騰に伴う作付中止などを挙げています。需要が減るなかで、栽培を続けるための人手や費用を確保することが難しくなっているのです。

い草の栽培には多くの手間がかかります。苗を育てて株分けし、冬に植え付けた後、6月下旬から7月中旬にかけて収穫します。収穫は暑い時期に集中し、品質を保つため早朝や夕方に作業することもあります。刈り取ったい草は、色や香り、光沢を整えるために天然の粘土を使って泥染めし、乾燥や選別を経て畳表に織り上げます。

こうした手間をかけて作られる国産畳表にとって、安価な輸入畳表との価格競争も課題です。加えて、い草を使用しない和紙や樹脂などの畳表も普及しており、畳を購入する消費者には素材や価格の選択肢が増えました。

生産農家が減ると、栽培技術や畳表を織る技術を受け継ぐ人も少なくなります。地域で長年培われてきた生産体制を維持するうえでも、国産い草を継続して使う需要が必要になっています。

畳屋の減少が消費者にもたらす不便

畳離れによる経営の厳しさは、い草農家に加えて畳店にも及んでいます。畳表を仕入れ、畳を製造し、住宅への納品や張り替えを行う畳店も、需要の減少と価格競争に直面しています。

経済産業省・中小企業庁の2024年版小規模企業白書 第2部には、山形県寒河江市の鏡畳店の事例が紹介されています。

同社は、住宅の洋風化による和室の減少や、安価な畳との価格競争が進むなかで、国産い草を使った高品質な畳への転換を進めてきました。産地の農家と協力して流通体制を整えるとともに、海外市場の開拓にも取り組んでいます。

この事例が示しているのは、従来の住宅向けに畳を販売するだけでは、経営を続けることが難しくなっているという業界の課題です。畳の需要が縮小する地域では、畳店が新しい顧客を開拓したり、特色のある商品を扱ったりする必要性が高まっています。

畳店が地域からなくなると、消費者にも影響が及びます。畳の表替えをしたくても、対応できる店を探すところから始めなければならず、遠方の業者に頼む場合は出張や運搬に対応しているかを調べる必要があります。

依頼先が少ない地域では、価格やサービス内容を比較することも難しくなります。畳の傷みを相談したいときや、表替えと新調のどちらが適切か迷ったときに、気軽に相談できる職人が身近にいることは、畳を使う家庭にとって大きな利点です。

一度畳店が閉業すると、そこで培われた技術や顧客との関係を地域内で引き継ぐことも課題になります。畳の新規購入が減ることで地域の店が維持しにくくなり、店が減ると既存の利用者も張り替えを頼みにくくなるという関係が生まれます。

これからの暮らしに畳を残す方法

和室がなくても使える置き畳という選択肢

住宅の間取りが変化するなかで、畳を生活に取り入れる方法も広がっています。その一つが、フローリングの上に敷いて使う「置き畳」です。

置き畳は、部屋全体を和室に改装することなく、必要な場所に畳のスペースを作れる商品です。リビングの一角に敷いてくつろぐ場所にしたり、子どもの遊び場として利用したりするほか、布団を敷くスペースとして使う方法もあります。

一般的な和室の畳と比べて、薄くて持ち運びやすい商品もあり、使わないときに片付けられることが特徴です。部屋の一部だけに敷けるため、家具の配置を大きく変えずに畳の感触を楽しめます。

置き畳にも、通常の畳と同じように、い草、和紙、樹脂などを使った製品があります。それぞれ特徴が異なるため、どのように使いたいかによって選ぶとよいでしょう。

素材 主な特徴 向いている使い方
い草 天然素材の香りと肌触りを楽しめる。湿気や汚れに応じた手入れが必要 畳の香りや自然素材の感触を楽しみたい場合
和紙 加工した和紙を使った畳表で、色の種類が豊富。い草特有の香りはない デザインや色の選択肢を重視する場合
樹脂 合成樹脂を使った素材で、水分や汚れへの対応を重視した商品がある 掃除のしやすさや日常の使い勝手を重視する場合

国産い草を使った置き畳も販売されているため、和室のない住宅でも国産畳表を選ぶことができます。畳の部屋を新しく作るほどのスペースがなくても、生活の一部に取り入れることが可能です。

また、置き畳は必要な枚数だけ購入でき、傷んだ部分だけを交換する使い方もできます。一般的な和室の畳替えとは異なる方法で、畳を使い続けられる点にも利点があります。

畳を取り入れる場所や目的が増えれば、国産い草を使った商品にも新しい需要が生まれる可能性があります。従来の和室で畳を使い続ける人に加え、フローリングの住宅で新しく畳を使う人を増やすことが、今後の市場を考えるうえで一つの方向となるでしょう。

筆者の考察|畳を使いたい人が使い続けられる環境をどう残すか

私は、畳文化を残していくためには、これから畳を使う人を増やすことと、すでに使っている人が使い続けられる環境を整えることの両方が必要だと考えています。

畳のある暮らしを経験した人のなかには、あの香りや足触りが好きで、これからも使いたいと思っている人がいます。その気持ちを持っていても、張り替えを依頼する店が近くになかったり、費用が負担になったりすれば、畳を維持することが難しくなります。文化を残すことを考えるなら、今も畳を使っている人が抱える不便に目を向けるべきでしょう。

新しい畳の香りを不快に感じる人についても、畳に触れてきた経験の違いが関係している可能性があります。子どもがい草の匂いを嫌がったとしても、成長するなかで好みが変わることはあるでしょう。畳の良さを知ってもらうには、香りの好き嫌いを問題にするより、実際に座ったり寝転んだりして使う機会を増やす方が効果的だと思います。

そのためには、畳店も従来の和室を中心とした販売方法から、現在の住宅事情に合った提案へと活動の幅を広げることが求められます。置き畳や小さな畳スペースを提案するほか、子育て家庭や高齢者の暮らしに合った使い方を伝えることで、畳を使ったことのない人にも関心を持ってもらえるのではないでしょうか。

同時に、地域の畳店が少なくなっている現状に対しては、住宅会社やリフォーム業者との協力が有効だと考えます。新築やリフォームの際に畳を設置した業者が、その後の表替えや修理についても相談を受け、対応できる畳店へ依頼をつなぐ仕組みがあれば、利用者の負担を軽くできます。畳店同士が地域をまたいで出張や運搬に協力する方法も考えられます。

国産い草の生産者にとっても、こうした販売やメンテナンスの仕組みが整うことで、継続的な需要を期待できます。生産者が素材の品質を守り、畳店がその価値を伝え、住宅会社が設置後の維持管理を支えるという役割分担ができれば、消費者も畳を選びやすくなるでしょう。

畳文化を残すために必要なのは、畳の良さを伝えることに加え、購入から張り替えまでを無理なく続けられる仕組みを作ることだと思います。新しい畳を使う人と、長年使ってきた人の双方が利用しやすい環境を整えることが、国産い草の生産や畳職人の仕事を次の世代へつなぐ道になると考えます。