中国人留学生に奨学金、日本に何が残る?日本を選ぶ理由と卒業後の進路
日本の難関校や大学で中国人学生の存在感が増しているという話を目にすると、そもそも中国の若者はなぜ日本で学びたいのかという疑問が浮かびます。中国国内の受験や就職競争が激しいから日本へ来るのでしょうか。外国人留学生には奨学金や授業料減免もあります。日本のお金で学んだ学生が卒業後に中国へ帰るなら、日本には何が残るのでしょうか。2025年5月時点で日本の外国人留学生は40万8,069人、このうち中国出身者は13万1,097人と国・地域別で最多です。中国人留学生が日本を選ぶ背景から経済支援、卒業後の就職・帰国、日本人学生や日本社会への影響まで見ていきます。
- 中国人留学生はなぜ日本の大学・大学院を選ぶのか
- 中国国内の大学・就職競争を避けるためなのか
- 欧米より日本を選ぶ理由は何か
- 東大・京大・早稲田・明治・立命館では中国人学生はどのくらいいるのか
- 中国人留学生は奨学金や学費免除で優遇されているのか
- 外国人留学生にはどんな奨学金・学費免除があるのか
- 中国人だから奨学金をもらえるのか
- 日本人学生の奨学金・授業料減免と比べるとどうなのか
- 日本で学んだ中国人留学生は卒業後どうするのか
- 日本企業に就職する中国人留学生はどのくらいいるのか
- 中国へ帰国する学生は何を求めて帰るのか
- 留学中に進路が変わる学生もいる
- 中国人留学生が増えると日本人にはどんなメリットがあるのか
- 日本企業や研究機関で働く人材を確保できる
- 日本人学生も国内で外国人と学ぶ機会が増える
- 中国人留学生が増えることで日本側にどんな負担やデメリットがあるのか
- 奨学金や授業料減免には誰のお金が使われているのか
- 中国人学生が増えると日本人の入学枠は減るのか
- 中国への偏りが大きくなっても大学の国際化と呼べるのか
- 中国人留学生を受け入れて日本に何が残るのか

中国人留学生はなぜ日本の大学・大学院を選ぶのか
中国国内の大学・就職競争を避けるためなのか
中国人留学生が日本を選ぶ背景には、「中国国内での大学進学が難しいから日本へ来る」という理由以外にも、さまざまな事情があります。2026年に中国の大学などを卒業する予定の学生は1,270万人で、前年より48万人増える見込みです。
大学を卒業する段階だけでも、1,000万人を大きく超える若者が進路選択の時期を迎えます。
中国人留学生を対象とした2026年の研究では、中国で高等教育が広く普及したことに伴い、国内の過剰な競争を背景に国外への移動が選ばれるようになったと指摘されています。中国人の留学は、国家戦略に基づくエリートの派遣から、個人のキャリア形成や生活の改善を求めるものへ変化したという分析です。
中国国内の競争は、日本留学を選ぶ背景の一つです。実際には、中国国内の大学、欧米の大学、日本の大学などを比較し、学力、留学費用、研究内容、卒業後の仕事まで含めて進路を選ぶ学生がいます。
欧米より日本を選ぶ理由は何か
日本が選ばれる理由について、2026年の研究では、欧米に比べて学費、生活費、渡航費を抑えやすいことや、卒業後に日本で安定した仕事を得られるという期待が挙げられています。
日本語を学んできた学生であれば、日本語で学位を取得できる大学や大学院も選択肢になります。中国と日本は地理的にも近く、帰国や家族の来日もしやすい環境です。
JASSOが私費外国人留学生全体を対象に行った生活実態調査では、日本へ留学した目的として「日本で働く、もしくは日本企業に就職するため」が50.2%、「学位を取得するため」が45.6%でした。
日本を選んだ理由では、「日本社会に興味があり、日本で生活したかった」が61.3%、「日本の大学等の教育・研究が魅力的」が37.8%となっています。
この数字の集計対象は外国人留学生全体です。日本留学は、学位取得に加えて、その後の仕事や生活まで含めて選ばれていることが分かります。
東大・京大・早稲田・明治・立命館では中国人学生はどのくらいいるのか
実際に中国人学生は日本の大学でどの程度の割合を占めているのでしょうか。東京と関西の大学が公表している資料を見ると、中国出身者が留学生の大きな割合を占める大学や研究科があります。
| 大学 | 中国出身学生の状況 |
| 東京大学 | 2026年5月1日時点の外国人留学生5,383人のうち、中国出身者は3,457人で64.2% |
| 早稲田大学 | 2026年5月1日時点の外国人学生6,046人のうち、中国出身者は3,129人で51.75% |
| 明治大学 | 2026年5月1日時点で、在留資格「留学」の学部生890人中326人が中国出身。大学院では349人中298人 |
| 京都大学 | 人間・環境学研究科では2025年5月1日時点の留学生209人中167人が中国出身 |
| 立命館大学 | 2025年5月1日時点の学部・研究科の留学生計3,185人中1,985人が中国出身。学部は1,875人中1,023人、研究科は1,310人中962人 |
大学ごとに「外国人学生」「外国人留学生」「在留資格『留学』を持つ学生」など集計方法が異なります。ここでは、中国出身者が多い大学や研究科の具体例として数字を掲載しています。
特に目立つのが大学院です。明治大学では、在留資格「留学」を持つ外国人学生に占める中国出身者の割合が学部で約36.6%なのに対し、大学院では約85.4%です。立命館大学も学部では約54.6%、研究科では約73.4%となっています。
東京大学では、中国出身の外国人留学生3,457人について公表表を集計すると、大学院の各課程や研究生などに3,291人が所属しています。中国出身留学生の約95%に相当します。
京都大学については、大学全体の中国出身留学生数を同じ条件で確認できる最新の公開資料が見つからなかったため、人間・環境学研究科だけを掲載しました。同研究科では、中国出身者が留学生の約79.9%です。
中学受験で中国系の子どもが目立つという話だけを見ると、子どもの教育熱に目が向きます。大学まで進んで数字を見ると、日本で学ぶ中国人の存在感は大学院でも大きいことが分かります。
中国人留学生は奨学金や学費免除で優遇されているのか
外国人留学生にはどんな奨学金・学費免除があるのか
外国人留学生には、日本人学生とは別に利用できる奨学金制度があります。代表的なのがJASSOの「留学生受入れ促進プログラム」です。
JASSOの留学生受入れ促進プログラムでは、学業や人物が優れ、経済的な理由で修学が難しい私費外国人留学生に学習奨励費を給付しています。大学・大学院レベルは月額4万8,000円、日本語教育機関は月額3万円です。
返済義務を伴う貸与型と区別される給付型です。大学などを通して申し込み、学業成績や経済状況などの要件を満たした学生の中から受給者が決まります。
さらに支援額が大きいのが国費外国人留学生です。2026年度の国費外国人研究留学生では、研究生などが月14万3,000円、修士課程が14万4,000円、博士課程が14万5,000円です。
所定の条件を満たせば渡日航空券が交付され、入学検定料、入学金、授業料等も支援の対象です。大学推薦では、これらの教育費を受入大学が負担します。採用には選考があり、利用者は選考を通過した学生です。
中国人だから奨学金をもらえるのか
JASSOの学習奨励費は私費外国人留学生を対象とし、国費外国人留学生制度も外国人留学生を対象とする制度です。
中国人留学生への支給も、学業成績、経済状況、語学力、大学からの推薦など、制度ごとの条件と選考で決まります。
大学、自治体、民間財団も独自に奨学金を設けています。対象となる国・地域や専攻を指定している制度もあり、中国出身者が応募できるものもあります。
日本人学生の奨学金・授業料減免と比べるとどうなのか
では、外国人留学生は日本人学生より金銭的に優遇されているのでしょうか。比べるには、誰が対象なのか、どの程度の学生が支援を受けているのか、支給額はいくらなのかまで見ていく必要があります。
JASSOが2023年度に行った私費外国人留学生生活実態調査では、奨学金を受給していた割合は調査対象全体で34.4%でした。調査対象全体で見ると、奨学金受給者は約3人に1人です。
課程別に見ると、学部正規課程の受給率は51.5%で、受給者の平均月額は5万9,000円です。修士課程・博士前期課程は55.6%で7万6,000円、博士課程・博士後期課程は65.3%で11万8,000円でした。ここにはJASSO以外の奨学金も含まれています。
国内の学生にも返済不要の支援があります。高等教育の修学支援新制度では、世帯収入や扶養する子どもの数などに応じて、給付型奨学金の支給や授業料・入学金の減免が行われます。
2025年度からは、扶養する子どもが3人以上いる多子世帯の学生について、所得水準による制限を外し、国が定める一定額まで授業料・入学金を減免する仕組みが始まりました。給付型奨学金の支給額は、世帯収入などによって異なります。
JASSOの給付奨学金で支援額が最も大きい第1区分では、大学の場合、国公立の自宅通学が月2万9,200円、自宅外通学が6万6,700円、私立の自宅通学が3万8,300円、自宅外通学が7万5,800円です。これに授業料等の減免が加わります。
国内向けの給付奨学金は、日本国籍の学生に加え、永住者や「日本人の配偶者等」など一定の在留資格を持つ外国籍学生も対象です。在留資格「留学」の学生には、外国人留学生向けの支援制度があります。
| 制度・対象 | 主な支援 |
| 私費外国人留学生 | JASSO学習奨励費は大学・大学院レベルで月4万8,000円。条件と選考あり |
| 国費外国人研究留学生 | 研究生等14万3,000円、修士14万4,000円、博士14万5,000円。授業料等や渡日航空券の支援あり |
| 国内の大学生等 (対象となる一定の在留資格を持つ外国籍学生を含む) |
世帯収入や扶養する子どもの数などに応じて、給付型奨学金や授業料・入学金の減免 |
大学院では制度の違いがさらに大きくなります。外国人の国費研究留学生には、修士・博士課程を対象とする月額給付があります。日本人大学院生向けの支援は、研究支援や大学独自の給付制度など別の枠組みで用意されています。
このため、外国人留学生への支援内容は、国費・私費、学部・大学院、選考結果によって分かれます。
その反面、外国人留学生専用の給付制度があり、選抜された国費留学生には生活費に加えて授業料や渡航費まで支援されます。
日本で学んだ中国人留学生は卒業後どうするのか
日本企業に就職する中国人留学生はどのくらいいるのか
留学生への支援を考えるとき、卒業後にどこで働くのかは気になるところです。日本で学んだ外国人材が、そのまま日本企業や研究機関で働けば、留学生の受け入れは国内の人材確保にもなります。
出入国在留管理庁が公表している留学生の日本企業等への就職状況によると、2024年に「留学」等の在留資格から、日本企業等への就職を目的とする在留資格変更が許可されたのは3万9,766人でした。
このうち中国人は1万4,511人で、国・地域別で最多です。全許可数の約36.5%になります。
この1万4,511人は、「留学」等から日本での就労を目的とする在留資格へ変更を許可された人数です。対象には、大学、専門学校、日本語教育機関などで学んだ人のほか、就職活動中の在留資格「特定活動」から変更した人も含まれます。
学歴や専門知識に加えて、日本語や社内外でのコミュニケーションも就職後の課題になります。厚生労働省の2025年外国人雇用実態調査では、外国人労働者を雇用する事業所が挙げた課題のうち、「日本語能力等のためにコミュニケーションが取りにくい」が46.2%で最多でした。この調査の対象は外国人労働者全体です。
中国へ帰国する学生は何を求めて帰るのか
日本で学んだ後、中国へ帰る学生もいます。中国人留学生を対象とした研究では、中国で築いている人脈を利用したほうが希望する仕事を得やすいと考えるケースや、子どもの教育、親の介護などを理由に帰国するケースが報告されています。
日本の大学で得た学位、日本語力、研究経験、日本での生活経験を中国での就職に生かす進路もあります。日本企業の中国拠点や、日本企業と取引する中国企業で働けば、日本で身につけた経験が仕事で使われます。
卒業後の進路は時間とともに変わる場合があります。日本で数年間働いてから中国へ帰る人もいます。
全国の中国人留学生について、卒業後に何%が日本へ残り、何%が中国へ帰ったのかを同じ母集団で追跡した最新の公的統計は、今回確認できませんでした。記事では、日本で就職した人数と中国へ帰国する理由を分けて扱います。
留学中に進路が変わる学生もいる
中国人留学生に関する研究では、来日時点で日本への定住を明確に考えていなかった人が、日本で学び、働き、生活するうちに日本に残ることを選んだ例も報告されています。
日本で希望する仕事が見つかった、日本での生活が自分に合ったといった経験によって進路は変化します。逆に、中国のほうが希望する仕事を得やすい、家族の近くで生活したいと考えて帰国する人もいます。
来日時点の留学目的と、数年後の就業先が変わる場合もあります。留学生活そのものが、卒業後の進路を決める期間にもなっています。
中国人留学生が増えると日本人にはどんなメリットがあるのか
日本企業や研究機関で働く人材を確保できる
日本政府は外国人留学生の受け入れを拡大するとともに、卒業後に日本で働く人を増やす方針を進めています。
政府が2033年までの目標として掲げているのは、高等教育機関・日本語教育機関の外国人留学生38万人、高校段階2万人の計40万人です。2025年5月時点で、高等教育機関・日本語教育機関の外国人留学生は40万8,069人となり、同じ範囲の38万人目標をすでに上回っています。
人数だけを見る段階から、どんな分野を学び、卒業後にどこで働くのかを見る段階へ移っています。
日本で学んだ外国人材を企業等が採用できることは、日本側が得る具体的な利益の一つです。
外国人留学生全体では、2024年度中に大学、大学院、専門学校などを卒業・修了した留学生は6万4,331人でした。そのうち進路を把握できた6万2,838人の中で、日本国内に就職したのは2万4,353人、38.8%です。この数字は外国人留学生全体の集計で、日本で学んだ留学生の一定数が国内の労働市場へ移っていることが分かります。
日本人学生も国内で外国人と学ぶ機会が増える
留学生を受け入れることで、日本国内でも日本人学生が異なる言語や文化を持つ学生と一緒に学ぶ機会が生まれます。
大学院では同じ研究室で研究を行い、学部では授業やゼミ、学生生活をともにする場面があります。卒業後も共同研究や仕事を通じて関係が続けば、大学時代にできた人的ネットワークが国外にも広がります。
交流の程度は、日本人学生と外国人学生が実際に一緒に学べる授業や研究環境を大学がどこまで作れているかによって変わります。
中国人留学生が増えることで日本側にどんな負担やデメリットがあるのか
奨学金や授業料減免には誰のお金が使われているのか
外国人留学生の受け入れには費用もかかります。国費外国人留学生の奨学金やJASSOの学習奨励費には公費が使われます。
2026年度の外国人留学生奨学金制度には217億円の予算が計上されています。国費外国人留学生制度が174億円、留学生受入れ促進プログラムが32億円などです。
大学が独自に授業料を減免する場合は、大学側にも負担が生じます。日本語教育、生活相談、在留手続き、就職支援など、留学生を受け入れるための業務も発生します。
留学生向けの奨学金には、企業や民間財団が資金を出す制度もあります。支援財源には公費と民間資金の両方があります。
中国人学生が増えると日本人の入学枠は減るのか
中国人留学生の増加が、日本人の入学枠にどう影響するのかという疑問もあります。
実際の入試制度は大学や学部によって異なります。一般選抜とは別に外国人留学生向けの選抜を設けている大学があり、募集人数を別枠として扱うケースもあります。大学院では研究科ごとに募集方法や定員が設定されています。
入学枠への影響は、大学や学部ごとの選抜方法と定員によって決まります。
研究室の指導教員、実験設備、研究費、学生寮など、日本人学生と外国人学生が同じ大学の資源を利用する場面はあります。入試枠に加えて、留学生の増加に合わせて大学側が教育・研究環境をどう整えているかも関係します。
中国への偏りが大きくなっても大学の国際化と呼べるのか
もう一つ考えたいのが、留学生の出身国の偏りです。日本全体では2025年5月時点の留学生40万8,069人のうち、中国出身者が13万1,097人で約32.1%を占めています。
大学によっては割合がさらに高くなります。東京大学では外国人留学生の64.2%、早稲田大学では外国人学生の51.75%が中国出身です。明治大学大学院では在留資格「留学」の学生の約85.4%、京都大学人間・環境学研究科では留学生の約79.9%を中国出身者が占めています。
「外国人留学生が増えること」と「さまざまな国や地域から学生が集まること」では、大学の教育環境も変わります。国際化を目的に留学生を増やすなら、総人数に加えて出身地域、専攻分野、日本人学生との交流、卒業後の進路まで確認することで、受け入れの成果をより具体的に検証できます。
中国人留学生を受け入れて日本に何が残るのか
2024年には中国人の留学生等1万4,511人が、日本企業等への就職を目的とした在留資格変更を許可されました。留学等の在留資格から日本での就労へ移る人がいることを示す数字です。
中国へ帰国する学生も、日本で得た日本語、専門知識、人脈を仕事で使う場合があります。日本企業との取引や共同研究に関われば、日本との関係は卒業後も続きます。
私が気になるのは、外国人留学生を何人受け入れたかより、その後です。2026年度には外国人留学生向けの奨学金制度に217億円の予算が組まれています。大学側にも授業料減免や留学生支援の負担があります。公費や大学の資源を使う以上、日本で学んだ人が卒業後にどのような形で日本社会と関わっているのかまで知りたいと思います。
日本企業に就職して働くのであれば、人材不足への対応や研究・技術分野の人材確保という形で日本側にも成果が残ります。中国へ帰国しても、日本企業との取引や共同研究に関わるなら、日本で学んだ経験が日中の仕事につながります。卒業後の進路によって、同じ留学支援でも日本側に残るものは変わります。
もう一つ気になるのが、日本企業で働くときに必要となる能力です。私は、日本の職場で力を発揮するには、学歴や専門知識に加えて、日本語で周囲と意思疎通しながら働く力も求められると思っています。実際、外国人を雇用する企業では、日本語によるコミュニケーションを課題に挙げる企業が多くあります。
中国では厳しい進学・就職競争があります。日本企業で働くようになれば、周囲と相談したり、役割を分担したり、ときには自分の考えを調整したりする場面も出てきます。高い学力や専門能力と、日本の職場で周囲と協力して働く力の両方を発揮できれば、日本企業にとって大きな人材になります。
外国人留学生への支援は、卒業した学生がどこで働き、研究や企業活動にどう関わったのかまで追って評価したいです。日本で働いた人数、研究成果、日本企業との取引、帰国後の共同研究など、卒業後に日本社会へ何が残ったのかを継続して追える仕組みが必要だと考えます。
