AIで管理職は不要になる?Uberが管理階層を減らす理由と、これから残る仕事
AIが普及すると管理職は不要になるのでしょうか。現時点で「AIによって管理職そのものがいらなくなる」とまでは言えないものの、情報整理や資料作成、進捗確認など、これまで管理職が担ってきた業務の一部はAIで効率化できるようになっています。
こうした中、米配車大手Uberは2026年9月、全従業員の約10%にあたる3300人規模を削減する大規模な組織再編に踏み切りました。Uberは管理階層や調整業務を減らし、よりシンプルで意思決定の速い組織を目指しています。AIが企業の仕事を効率化していく中で、管理職の役割を考える材料にもなります。Uberの組織再編を手掛かりに、AI時代の管理職について考えます。
- AIで管理職は不要になるのか
- 管理職そのものが不要になるとは現時点では言えない
- AIで減りやすいのは「管理するための仕事」
- 判断・責任・人材育成までAIに任せられるとは限らない
- Uberはなぜ3300人規模の人員削減をするのか
- 業績悪化ではなく「組織が複雑になりすぎた」と説明
- 1~2人のマイクロチームを約半分に削減
- 配置転換される人と解雇される人の割合は分からない
- AIが普及すると中間管理職は減っていくのか
- AIで1人の管理職が担当できる仕事が増える可能性
- 「管理職」より「管理するだけの管理職」が減るのではないか
- 管理職を減らしすぎれば別の問題も起こる
- 日本でもAIで管理職の仕事は減っていくのか
- 日本では管理職への生成AI活用はまだ模索段階
- 人手不足の日本では「人を減らすAI」とは限らない
- 管理職から部下を持たない職務へ、キャリアの形も変わるのか
- 部下を持たない職務という働き方
- 「昇進=部下を持つ」というキャリアは変わる可能性
- Uberが経営資源を振り向けるロボタクシーとは
- ロボタクシーは自動運転によるタクシーサービス
- 人員を減らしながら将来事業には投資する
- AI時代に管理職へ求められる仕事は変わりそう
- AIに仕事を奪われる側ではなく、AIを使って判断する側へ
- 問われるのは肩書きより、どんな価値を出せるか

AIで管理職は不要になるのか
管理職そのものが不要になるとは現時点では言えない
AIによって管理職の仕事が変わる可能性はありますが、「AIが普及すれば管理職が不要になる」と断定できる段階ではありません。
リクルートマネジメントソリューションズの調査(2026年6月に、従業員100人以上の企業で働く管理職500人を対象)では、生成AIを活用すると「マネジメント業務そのものが減り、管理職の負担が下がる」と考える人は18.2%でした。
これに対し、「AIには解決できない問題に対処するなど、マネジメント難度が上がる」と考える人も13.0%います。「分からない」という回答は33.2%で最も多く、管理職の仕事が生成AIによってどう変わるのかについて、まだ多くの人が判断できていない状況です。
同じ「管理職の仕事」でも、AIで効率化しやすい仕事と、人が関わる必要性が高い仕事を分けて考える必要があります。
AIで減りやすいのは「管理するための仕事」
生成AIが得意なのは、大量の情報を整理したり、文章を作成したり、複数の情報から案を出したりする仕事です。
管理職の業務で考えると、会議の内容を整理する、報告書の下書きを作る、計画案をまとめる、データから問題点を探す、部下との面談記録を要約するといった作業があります。
同調査でも、管理職による生成AIの利用は「計画・企画立案」が14.8%、「業務の改善」が14.0%、「人材育成」が12.6%などとなっています。評価コメントの作成や面談記録・議事録の要約、育成方針を考える際の壁打ちなどに利用している例も確認されています。
現在は「あてはまるものはない」と回答した管理職が49.4%で、約半数が調査で挙げられたマネジメント業務に生成AIを利用していません。それでもAIの利用が広がれば、管理職が自分で行っていた事務的な業務にかける時間が減る可能性はあります。
管理職1人あたりの事務作業や調整業務が減れば、これまでより多くの部下や広い範囲を担当できるようになります。その結果として、会社全体で必要な管理職の人数が減るという流れは考えられます。
判断・責任・人材育成までAIに任せられるとは限らない
管理職の仕事には、効率だけでは判断できないものがあります。
例えば、仕事でミスを繰り返している部下にどう対応するのか、能力は高いものの周囲との関係が悪化している社員をどう評価するのか、意見が対立するメンバーをどうまとめるのかといった問題です。
AIは選択肢を整理したり、判断材料を提示したりすることはできます。しかし、その人の性格やこれまでの経緯、職場の雰囲気、本人が抱えている事情まで踏まえて最終判断し、その結果に責任を持つことは別の問題です。
先ほどの調査で、人材マネジメントに生成AIを活用していない管理職に理由を聞いたところ、13.8%が「感情・人間性を扱う仕事に生成AIは適さないと感じている」と回答しています。
AIによって管理職の仕事がなくなるというより、AIに任せられる業務と、人が担うべき業務の境界が変わっていくと考えたほうが現状には近そうです。
Uberはなぜ3300人規模の人員削減をするのか
業績悪化ではなく「組織が複雑になりすぎた」と説明
Uberは2026年9月2日、組織を簡素化するため、全従業員の約10%を削減すると発表しました。Bloombergは削減人数を約3300人と報じています。
大規模な人員削減と聞くと業績不振を想像しますが、今回のUberは事情が違います。
2026年第2四半期のUberの売上高は約142億ドルで前年同期比12%増、営業利益は約19億ドルで30%増でした。CEOのダラ・コスロシャヒ氏も、業績が好調な中でなぜ人を減らすのかという疑問を想定したうえで組織再編の理由を説明しています。
Uberは過去5年以上で大きく成長する中で、組織の階層が増え、部門間の調整も増えました。責任の所在が細分化し、議論や意思決定にも時間がかかるようになったとしています。
今回の人員削減は「会社が赤字だから人件費を削る」という従来型のリストラとは性格が異なります。組織を小さくして意思決定を速め、将来の成長分野へ人や資金を振り向けることが目的です。
なお、Uberは今回の3300人規模の削減について、AIが管理職の仕事を代替できるようになったことを理由には挙げていません。「UberがAIによって管理職を大量解雇した」と考えるのは正確ではありません。
1~2人のマイクロチームを約半分に削減
Uberの組織再編で特徴的なのが、管理する人数が少ない小規模なチームの見直しです。
Uberは、直属の部下が1~2人しかいない「マイクロチーム」を約50%減らしました。管理職が担当する範囲を広げることで、管理階層そのものを薄くしています。
さらにUber公式発表では、CEOから7階層以上離れた位置にいる従業員を20%減らしたとしています。
ここは数字を混同しないよう注意が必要です。BloombergはUber広報担当者の説明として「管理職を20%減らす」と報じています。Uberが自社で公開したCEOメッセージに記載されている20%は「CEOから7階層以上離れた従業員」の削減率です。
どちらも組織階層を減らす動きではありますが、「管理職の20%が解雇される」という意味ではありません。
Uberは調整を主な仕事とする役割も削減し、社員が調整に時間を使うより、実際に商品やサービスを作ったり顧客に対応したりすることへ時間を使える組織を目指しています。
配置転換される人と解雇される人の割合は分からない
今回の組織再編では、一部の管理職が部下を持たない職務へ移ることも報じられています。
Bloombergによると、一部の管理職は部下を持たない職務へ移ります。英語ではIndividual Contributorと呼ばれ、他の社員を管理するのではなく、自分自身が担当する業務で成果を出す立場です。
では、管理職から部下を持たない職務へ配置転換される人と、Uberを離れる人はそれぞれ何人なのでしょうか。
この内訳は公表されていません。管理職のうち何人が解雇対象になるのかも明らかにされていないため、「配置転換されるのはごく一部で、ほとんどが解雇される」と断定することはできません。
AIが普及すると中間管理職は減っていくのか
AIで1人の管理職が担当できる仕事が増える可能性
AIによって資料作成や情報整理、進捗確認などの管理業務が減れば、1人の管理職がこれまでより多くの部下や業務を担当できるようになります。その結果、管理職の人数を減らしたり、組織の階層を少なくしたりする企業が出てくることも考えられます。
部下10人の進捗状況を確認し、それぞれから報告を受け、資料をまとめる作業に毎週多くの時間を使っていたとします。AIや業務システムによって情報を自動的に整理できれば、管理職自身が集計や資料作成に使う時間は減ります。
その時間を判断や部下との対話に振り向けられれば、1人の管理職が担当できる人数を増やせるかもしれません。
同調査では、生成AIによって「人員配置や役割の再設計が必要なレベル」で人材マネジメント業務を削減できると考える管理職が10.8%いました。「分からない・判断できない」は40.4%で最も多く、現時点では企業も管理職もAIによる変化を見極めている段階と考えられます。
「管理職」より「管理するだけの管理職」が減るのではないか
私は、AI時代に減る可能性があるのは、管理職という立場そのものより「管理することが仕事の中心になっている管理職」ではないかと考えます。
部下から報告を集めて上司へ伝える。会議のために資料をまとめる。複数の部署から情報を集める。スケジュールを調整する。進捗状況を一覧にする。
これらも組織を動かすために必要な仕事です。しかしAIや業務システムが情報を集約し、整理し、必要な人へ共有できるようになれば、人間が間に入って情報を運ぶ必要性は低くなります。
Uberが今回の組織再編で問題視したのも、社員が実際に仕事を進めることより、部署間の調整や認識合わせに時間を使いすぎている状態でした。
売上が落ちたときにどの事業を立て直すのか、トラブルを起こした部下をどう指導するのか、能力の異なるメンバーへどのように仕事を割り振るのかといった場面では、誰かが判断しなければなりません。
AIから意見を得ることはできても、会社として何を選び、その結果に誰が責任を持つのかという役割まで消えるわけではありません。
その意味では、「AIで管理職がいらなくなる」というより、「AIに任せられる管理業務しかしていない管理職は、存在意義を問われやすくなる」と考えたほうがよいのかもしれません。
管理職を減らしすぎれば別の問題も起こる
管理職を減らせば、意思決定のスピードが上がり、人件費も抑えられます。上司の上にさらに上司がいるような組織を見直せば、責任の所在も分かりやすくなるでしょう。
一方、管理職は会社と現場をつなぐ役割も担っています。
これまで5人を見ていた管理職が15人を見るようになれば、1人の部下と話せる時間は少なくなります。仕事上の悩みや人間関係の問題など、数値や進捗表だけでは分からない変化を見落とす可能性もあります。
若手社員への指導や将来の管理職候補を育てる時間が不足すれば、短期的には組織が効率化しても、長期的には人材育成が弱くなることも考えられます。
管理職を減らせば会社が必ず効率的になるわけではありません。AIで削減できる仕事と、人間に残すべき役割を整理せず、人数だけを減らせば、残った管理職へ負担が集中する可能性があります。
日本でもAIで管理職の仕事は減っていくのか
日本では管理職への生成AI活用はまだ模索段階
日本でも生成AIの利用は広がっていますが、管理職の仕事が大きく置き換わるところまで進んでいるとは言いにくい状況です。
2026年の国内調査では、約半数の管理職が、調査で示されたマネジメント業務に生成AIをまだ利用していません。
利用している管理職からは、評価コメントの作成や面談記録の要約、育成方針を考える際の壁打ちなどで効果を感じているという回答も出ています。
最初から人間の管理職をAIへ置き換えるのではなく、資料作成や情報整理など使いやすいところからAIへ移している段階と見ることができます。
人手不足の日本では「人を減らすAI」とは限らない
海外企業のAIリストラに関するニュースが続くと、日本でも同じように大量の人員削減が始まるように感じます。しかし、日本企業には人手不足という別の問題があります。
KPMGコンサルティングの調査(2026年に国内企業・公的機関で働く2788人を対象)では、AIによって自分の職業が代替されるリスクを認識している人は約18%でした。
同社は、日本では慢性的な人手不足を背景に、AIによる業務代替が労働力不足を補う手段として前向きに捉えられている可能性を指摘しています。
海外では、AI導入に伴う人員削減が課題として指摘されています。日本では足りない人をAIで補う使い方が広がる可能性もあります。
私は、日本でもAIによって不要になる業務や職種は出てくると考えます。しかし、海外企業の人員削減の数字だけを見て、「日本でもAIによる大量解雇がすぐに起きる」と考えるのは早いと思います。業界や企業の人員状況によって、AI導入の目的は大きく異なるからです。
管理職から部下を持たない職務へ、キャリアの形も変わるのか
部下を持たない職務という働き方
今回のUberの組織再編で注目したいのが、一部の管理職がIndividual Contributorへ移るという点です。
Individual Contributorは、部下を持って人を管理するのではなく、自分自身が担当する業務で成果を出す立場です。エンジニアや研究者のように、管理職にならずに高い専門性を生かして重要な役割を担うキャリアもあります。
管理職を減らすことは、そこで働いていた人の能力まで不要になることを意味しません。
人を管理するより、自分自身が商品を作ったり技術開発をしたり、専門知識を使って問題を解決したりするほうが適している人もいます。Uberの配置転換は、「管理職として必要か」と「その人材が会社に必要か」を分けて考える動きとも見ることができます。
「昇進=部下を持つ」というキャリアは変わる可能性
私は、AIによって組織階層が薄くなれば、「昇進すれば部下を持つ」という従来のキャリアの考え方も変わる可能性があると思います。
日本企業では、一般社員から主任、課長、部長と昇進し、役職が上がるほど多くの部下を管理する形がよく見られます。
しかし、会社が必要とする管理職の人数が減れば、能力の高い社員全員に管理職のポストを用意することはできません。
そこで重要になるのが、人を管理する管理職とは別に、高い専門性や成果によって評価されるキャリアです。
優秀なエンジニアだからといって、人を育てたりチームをまとめたりする能力まで高いとは限りません。専門家として能力を発揮したい人を、昇進させるために管理職へ移すことが会社にとって最適とも限りません。
AIで組織が効率化されるほど、「何人の部下を持っているか」ではなく、「どのような専門性を持ち、どのような成果を生み出せるのか」を評価する仕組みが重要になるのではないでしょうか。
Uberが経営資源を振り向けるロボタクシーとは
ロボタクシーは自動運転によるタクシーサービス
Uberが今後力を入れる分野の一つがロボタクシーです。
ロボタクシーは、自動運転技術を使って乗客を運ぶタクシー・配車サービスです。「無人タクシー」と呼ばれることもありますが、ロボタクシーだから最初から必ず運転席が無人とは限りません。
Uberは日産自動車、英Wayve、日の丸交通と協力し、2026年後半から東京でロボタクシーの試験導入を予定しています。
初期段階では日の丸交通の経験豊富なドライバーが安全確認を行うセーフティーオペレーターとして乗車します。その後、規制当局の承認などを前提に完全無人運転へ進む計画です。
そのため、「ロボタクシー=すでに完全無人で走るタクシー」と考えるより、「自動運転によるタクシーサービスで、段階的に無人化を目指している」と考えると分かりやすいでしょう。
人員を減らしながら将来事業には投資する
Uberは今回、約3300人規模の人員削減を行いながら、自動運転を将来の重要な成長分野に位置付けています。
この動きを見ると、今回のリストラは人件費を減らすことだけが目的ではないことが分かります。
現在の組織に使っている人や資金を減らし、その余力を成長が期待できる事業へ振り向ける。業績が悪化してから人員を削減するのではなく、業績が好調な段階で将来に向けて経営資源を再配分している点が今回のUberの特徴です。
AI時代に管理職へ求められる仕事は変わりそう
AIに仕事を奪われる側ではなく、AIを使って判断する側へ
AIが管理職の業務へ入ってくれば、これまで自分で行っていた資料作成や情報整理をAIへ任せる場面は増えていくでしょう。
そのとき管理職に必要なのは、AIより速く文章を書いたり、大量のデータを自分で集計したりする能力ではありません。
AIが出した情報が正しいのかを確認する。複数の選択肢から会社として進む方向を決める。AIには分からない部下の状況を考慮する。問題が起きたときに責任を持って判断する。
こうした役割は、AIを導入したからこそ重要になる可能性があります。
問われるのは肩書きより、どんな価値を出せるか
Uberの3300人規模の削減は、AIが管理職を不要にした事例ではありません。しかし、管理階層を減らし、調整を中心とする仕事を見直す動きは、AI時代の会社組織を考えるうえで参考になります。
私は、これから管理職という仕事がなくなるとは考えていません。報告をまとめる、情報を伝える、進捗を確認するといった仕事だけでは、管理職としての価値を示しにくくなる可能性があります。
AIに任せられる仕事はAIへ任せながら、人を育て、判断し、責任を持ち、専門性を使って問題を解決する。
AI時代に問われるのは「管理職という肩書きがあるか」ではなく、その人が組織の中でどのような価値を生み出せるのかになっていくのではないでしょうか。
